後/「さくら」に乗る


           2月5日、土曜日の朝10時14分。
           2両編成の快速「シーサイドライナー8号」は長崎駅を発車しました。
           このごろ、雲が低く立ちこめる毎日が続いていましたが、
           途中、晴れ間が見えたかと思うと、なんと青い空が車窓いっぱいに広がりました。
           ひさしぶりに青い空をながめました。
           佐世保着11時52分。乗りかえのため改札をでます。
           佐世保駅が高架化されたのは、3年前のこと。
           駅のコンコースで、ハンバーガーを買いました。
           佐世保は、ハンバーガーの発祥の地ともいわれています。
           かなり、ボリュームがありました。

           佐世保からは松浦鉄道西九州線に乗ります。
           西九州線は開通以来、幾多の変遷があり、
           1987年4月1日、国鉄の分割民営化によってJR九州に承継。
           翌年には、松浦鉄道に移管され西九州線になりました。
           佐世保の発車は12時14分。1両編成です。
           土曜日の昼下がりとあって、学生さんがたくさん乗ってきました。
           学生さんの会話に、ちょっぴり聞き耳をたててみます。
           すると、長崎と佐世保の方言の違いに気づきました。
           佐世保言葉の方が軽快な感じです。
           途中、楠久駅でレトロ調気動車「レトロン号」とすれ違いました。
           「レトロン号」は、日本宝くじ協会から寄贈された車両です。
           日蘭交流400周年を記念して、2000年1月8日から運転が開始されました。
           終点の伊万里についたのは14時40分。

           ここでは松浦鉄道からJR筑肥線に乗りかえます。
           松浦鉄道の伊万里駅と筑肥線の伊万里駅は、
           1本の道路によって、完全に分断されています。
           旧国鉄時代は、つながっていたと思いますが、
           もう、二度と直通運転されることはないのです。さびしい感じがしました。
           次の筑肥線は15時19分発です。この列車もまた1両編成でした。
           唐津までは1時間弱でつきました。

           唐津駅は1983(昭和58)年、JR筑肥線電化の際に高架駅に改築されました。
           駅は2面4線の構造となっています。
           乗りかえ時間は8分、
           西唐津発で地下鉄に乗り入れ福岡空港までいく、6両編成の電車に乗り込みました。
           これまで乗った車両は、ボックスシートでしたが、こんどの電車はロングシートになっています。
           1両に4つの扉がつく通勤型電車で、都会へ近づいてきたと改めて感じさせられます。
           途中、玄界灘が間近に広がる路線を走りました。
           海岸線と線路のあいだには道路がありますが、波しぶきが迫ってくる勢いです。
           筑前前原あたりからお客さんが増え、姪浜を過ぎると、ほぼ満員の様相です。
           姪浜から地下鉄になりますが、駅ホームには安全対策として、
           乗客の落下防止のためにホームドアが備えられています。
           そして17時35分、無事、博多駅に到着しました。
           まずはホテルを予約。旧友と待ち合わせ、酒を肴に遅くまで語りあいました。

           2月6日、日曜日の朝9時54分。
           東京からの寝台特急「はやぶさ・さくら」は、定刻通りに博多駅に入ってきました。
           この特急は、途中の鳥栖で熊本行の「はやぶさ」と、長崎行の「さくら」に分かれます。
           特急「さくら」は、廃止されるということもあって、
           ホームには、カメラをかまえた鉄道ファンでいっぱいです。
           そして、車内にも…。
           車内の通路では、カメラを持った兄チャンたちが、あてどなく行き来していました。
           もしかしたら、私もその中のひとりかもしれませんが…。
           そうそう前回、博多から長崎までの所要時間を3時間9分と書きましたが、
           途中、2本の特急「かもめ」に抜かれました。
           まず肥前山口で、9分の停車中に特急「かもめ11号・みどり7号」に抜かれ、
           客扱いをしない湯江で、運転停車中に「かもめ13号」に抜かれました。
           「さくら」は、あくまでも特急なのですが…。
           でも、各駅停車の電車に抜かれないだけ、マシなのかもしれません。

           ちなみに当日の「さくら」の編成を記してみます。
           ED76-92、スハネフ15-2、オハネ15-2001、オハネ15-1202、オハネ15-1、スハネ15-20
           席は9号車、オハネ15-1202の15番・下でした。
           13時05分、寝台特急「さくら」は、終着の長崎につきました。

           郷里の東京を離れ、長崎に引っ越してきて13年と数か月。
           はたして何回、フルで「さくら」に乗ったでしょう。
           あの客車ならではの独特な揺れや、のんびりした車内の雰囲気が味わえなくなると思うと、
           さびしくてたまりません。

           最後に、たとえ話しをします。
           福岡で催される、有名な歌手のコンサートに行きます。
           目的はコンサートにあります。その歌手のうたを聴きたいがため。当然のことです。
           すると長崎から福岡までの往復は、たんに移動のための手段となります。
           でも、でも…。今回の旅の目的は違います。その途中の、移動が目的なのです。
           復路の寝台特急「さくら」は、もとより、
           往路の佐世保、たびら平戸口、松浦、伊万里、唐津経由の博多まで。
           誰も、こんな乗り方をして博多までいかなでしょう。
           時間にしても、お金にしてもムダだらけなのですから。
           まして「さくら」に乗りたいからって、柳井から特急券とB寝台券を買うなんて…。
           でも今回は、それがしたかったのです、乗りたかったのです。
           そして博多はというと、たんなる手段。
           旧友との再会も、ひとつの目的ではありましたが、途中の宿泊地でしかないのです。
           たんに1泊するためだけの場所。
           たまには、こんな旅があっていいんじゃないでしょうか…ね。



3228D列車「シーサイドライナー8号」(右)は旧国鉄塗装
シーサイドライナー塗装(左)は普通列車
長崎に住みながら、まだ行ったことがないハウステンボス
ただただ通過するのみ

ひさしぶりに佐世保駅に降り立つ
高架駅となってからは初めて
佐世保駅発車直前の松浦鉄道西九州線レールバス336D列車
伊万里まで2時間34分の旅

車で平戸島まで渡ったことはあるが、松浦鉄道では初めて べつに急な坂をのぼっているわけではない
ただ道路標識が傾いていただけ…

写真右側、直角に車道が走る
そのまた右に松浦鉄道の伊万里駅がある
筑肥線8532D列車
ウトウトして車窓風景を見のがす

JR筑肥線から福岡市営地下鉄空港線へ乗り入れる652C列車
1両4枚扉の通勤型車両で6両編成
突然、車窓に玄界灘が広がる

博多駅に入線する3列車、寝台特急「はやぶさ・さくら」号
ヘッドマークもさ「はやぶさ」と「さくら」が合体している
行先表示板。2月28日をもって見られなくなる

9号車、オハネ15-1202の車内 鳥栖駅にて「さくら」の最後尾
スハネ15-20
終着駅・長崎に着いた「さくら」

【往路】普通乗車券
誰がこんな切符を買うだろうか?
【復路】特急券・B寝台券
柳井から博多までは空席のまま走る
【復路】普通乗車券
博多から長崎まで順当な乗車券


                 (注)運賃・料金、時刻・時間は、すべて乗車当時のものです


前/切符を買うまで


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