初詣電車
NEW YEAR's STREET CAR MEMORY
〜2号系統がすれ違うとき〜



2007年(平成19)12月31日から2008年(平成20)1月1日へ





2008年(平成20)2月29日(金)たちあげ


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年末年始。みなさんは、どのように年を越しますか?
こたつに入ってテレビを見たり、初詣に向かう途中だったり…。
久しぶりの故郷でのんびりしていたり、はたまた海外でバカンス。
もしかしたら、仕事の真最中という方もいらっしゃることでしょう。
みなさん「来年こそは」「今年こそは」と、期待に胸を膨らませていることと思います。
そんな年末年始、ひとり電停に立って、ひたすら電車を待つ男がいました。
男は、猛吹雪の中、じっと3時間近くものあいだ電停に立っていました。



長崎市民の足、路面電車は大晦日から元日にかけての深夜、初詣電車を運転しています。
今回は、2007年(平成19)12月31日から翌2008年(平成20)1月1日にかけて
赤迫と螢茶屋の間を、大波止経由の2号系統で20往復、23時発から1時40分発まで8分間隔で走りました。
1年が終わり、1年が始まる節目のとき、終電車が通りすぎたあとも電車は頑張ったのです。




初詣電車は2号系統の路線を走りました。
ふだん2号系統は、最終近くで上下各1本走るだけ。
めったにお目にかかることができません。
でも、今回、同じ2号系統がたくさん走るということで…
もしかしたら、2号系統の行き先幕のついた上りと下りの電車がすれ違う、
と〜ても珍しいシーンが見られるかもしれないのです。
千載一遇のチャンスなのです。

時刻表をみました。
すると長崎駅前、西浜町アーケード入口、公会堂前3つの電停で、
1分違いですが、すれ違うことが分かりました。
そこで、3つの電停のうち、距離的にだいたい中間地点ではないかと思われる
長崎駅前の電停で、期待に胸をふくらませながら、待つことにしました。



ふだん、最終電車近く、上下各1本しか走らない2号系統。
ちょうど長崎駅前ですれ違うようにダイヤが組まれています。
1日に上下各1本しか走らない電車がすれ違う瞬間を狙うのは、至難の業でしょう。
今日すれ違わなかったら明日、明日すれ違わなかったら明後日…
いつすれ違うか分からない、1日に1回の一瞬のために、毎日、出向くことになるのです。
ならば、2号系統がたくさん走るこの時期の方が、よりすれ違う確率は高いはず。
めったに見ることのできない瞬間に、お目にかかれるかもしれないのです。
年に一度のこの時期だけの3時間、このチャンスを見逃すわけにはいきません。
はてさて、何回すれ違ったのでしょうか? すれ違うシーンを、実際に見ることができたのでしょうか?






長崎駅前にいたのは、31日の23時から1日の2時まで。
あたりは猛吹雪です。雪が横からしんしんと刺さってきます。
体の芯まで冷えきっている感じです。かじかむ手をだまし、シャッターを押す指に力は入りません。
そんななか駅前第3歩道橋と第2歩道橋、2本の電停ホーム、
そして、歩道橋と電停ホームを結ぶ4本の階段を行ったり来たり、走りまわりました。

23時30分をまわった頃、近くのお寺でしょうか、除夜の鐘の音が聞こえてきます。
鐘の音は年明けまで続きました。
気のせいか0時が近づくにつれ、電車に乗る人の数も増えてきています。
電車内も混み合っています。
電停ホームには電車を待つ人がいて、電車が入ってくると、みな乗り込みます。
でも、乗りません。そのとき私の目はカメラを通して電車を追っています。
電車内からは白い視線がからだに突き刺さります。
年が明けたのは…ぜんぜん気がつきませんでした。
ひとりカウントダウン…しませんでした。

はじめは走っている全便、全電車を撮ろうかと思いました。
でも、途中、5分ほど歩道橋を離れなければならなくなったため
残念ながら全電車を撮ることはできませんでした。

3時間近く電停にいて、どうにか、すれ違うシーンをカメラにおさめることができました。
2号系統どうしがすれ違う、とても珍しい決定的瞬間です。


以下は、その記録です。



初詣電車の記録








ちなみに…
1月1日の朝に写した、パンパンに破裂しそうな手。
風呂に入ったらヒリヒリ、凍傷寸前のようです。




ふだんは、こんな感じです。