海を渡った電車
1960年(昭和35)4月25日。
長崎港内、中之島突堤から1隻の船が出港しました。
船は1両の電車を積んでいます。
電車は、ケネバンクポート市内にある動く電車博物館に動態保存される134号。
昭和33年、アメリカのメイン州ケネバンクポート市の電車博物館から
運輸省を通じて、日本の古い電車を譲り受けたいと申し入れがあました。
各社、廃車予定車をリストアップし、長崎からは40、44、124、134号を選抜。
履歴書と写真を送ったところ、134号が選ばれ、寄贈することになりました。
化粧直しをし整備をすませて準備万端、待機していましたが、
運送費の負担問題から、1年間を螢茶屋車庫で過ごすことになります。
結局、長崎から門司までの国内運送費を外務省が補助する形で長崎電軌が、
門司からアメリカまでをアメリカ側が負担することで解決します。
1960年(昭和35)4月25日、長崎をあとに海路、門司へ向かいます。
4月29日夕刻、U,S Lineのパイオニア、ミンクス号に積まれ日本を去ります。
6月5日頃、ボストンに到着。博物館に入ります。
6月25日、ニューヨーク領事官立ち会いのもと、引き渡し式が挙行されました。
写真は長崎駅前を走る雄姿です。
不安と期待でいっぱいの横腹には「Nagasaki Electric Tramway Co.,Ltd.」(長崎電気軌道株式会社)とあります。
134号は福博電車で新造され、1953年(昭和28)、長崎電軌に譲受された木造単車です。
写真提供/長崎電気軌道株式会社
写真の無断転載・使用禁止