其之参
いつが今?
2003年(平成15)8月7日


たとえば、そのむかし、とある場所に《建物あ》があったとします。
しかし今はもう《建物あ》がなくなって、別の《建物い》に変わっています。
そこで《建物い》のある場所を分かり易くするために
「旧《建物あ》の地」という説明をつけ加えます。
では、その『旧』とは、いったい、いつの『旧』なのでしょうか?
もしかしたら《建物い》も、なくなって
さらにまた別の《建物う》になっている可能性もあるのです。

年表を作ること。過去の事象を、なるべく、余すことなく記すことです。
これは、年表が年表である存在理由でもあります。
しかしです。
年表は、過去の事象だけではなく、
現在進行している、刻々と変わりゆく事象も含んでいるのです。
いま、まさに、そのなかに居ながらにして年表を作っているのです。
だから昨日まで有ったモノが、今日は無くなっていたり、
昨日まで無かったモノが、今日は有ったり、することもあります。
したならば、いったい、どこに『現在』の基準を設けたらよいのでしょうか?
いま、年表を更新している間にも、いろいろなモノが移り変わっているのです。
大変です。

町名でも同様なことがいえます。
《現●●●●町》といっても、いつの現在なのか?
時代の移り変わりとともに
町名が変わることもあります。変わらないこともあります。
範囲が広くなったり、狭くなったり
合併したり分割したりすることもあります。
《現●●●●町》とはどの時代の、どの町名なのでしょうか?
問題です。

たとえば、そのむかし、《A》という山があったとします。
あるとき《A山》の麓に《B神社》が鎮座しました。
すると、いつのまにか、もともとの名前、《A山》の代わりに
《B》の神社の名前がつき《B山》と呼ぶようになり、一般的な名称となりました。
そのとき年表には「●年、B山にB神社が鎮座」とは書けないのです。
あくまでも「●年、A山にB神社が鎮座。のちB山と呼ばれるようになる」
としなければならないのです。
難しいです。

ふと、タワイのないことを疑問に感じてしまいました。

長崎年表をよくよく読み返してみると、設定がてんでバラバラです。
いつの日か、ちゃんと整理しなければ……。


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