其之弐
略して「電鉄」
2003年(平成15)7月31日
今回の「長崎補色」は、先日から掲示板で問題になっている
「長崎電気軌道(株)」の略称の問題を、書簡風に綴ってみました。
トレペさま▼先日から問題になっている「長崎電気軌道(株)」の略称の問題です。
「長崎電鉄」の方にうかがってまいりました。
▼正式には「長崎電気軌道株式会社」。略せば「長崎電軌」となるところでしょう。
ところが長崎では「長崎電鉄」「電鉄」という略称を普段、使っているのです。
▼ではなぜ「電鉄」と略すのか? そのむかし「長崎電気軌道(株)」では、鉄道事業のほかに、
バスと交通船(長崎港内船)の運行にも携わっておりました。
▼当時、「電鉄バス」「電鉄丸」の名称で市民に親しまれておりました。
▼で、どういう経緯で「電鉄」といわれるようになったのかは、分かりません。
ここがいちばん重要なのでしょうが、分かりません。
▼厳密にいえば「長崎電軌」。「電軌」としなければいけないのでしょうが、
愛称の「電鉄バス」や「電鉄丸」から、いつのまにか「長崎電鉄」「電鉄」と呼ばれるようになり、
現在に至り、ふつうに使われている状況です。
▼本来、「電鉄」と省略す場合、もともとの名称は「長崎電気鉄道」でなければなりません。
しかし「長崎電気軌道」。
▼たとえば長崎市内中心部、「長崎電気軌道(株)」の他に鉄道会社はありません。
ので「電鉄」と略しても、紛らわしかったり、混同したり……は、ありません。
また「長崎電軌」と略した場合、言葉では「ながさきでんき」となり、「長崎電気」と混同しかねません。
実際、「長崎電気」という会社があります。
▼ところで、NTTのハローページを見たところ
「長崎電気軌道(株)」とは別の項目で、「長崎電鉄(株)」がありました。
ともに1行目の代表電話番号と住所は同じ。
なんとNTTでも「長崎電鉄」という名称を把握しているくらい、長崎では浸透しているのです。
長崎では「長崎電鉄」「電鉄」はアリです。
▼トレペさま。お分かりいただけましたでしょうか。納得いただけましたでしょうか。
分かってください。納得してください。許してください。
よろしくお願いします。失礼しました。
ちなみに電車の営業運転を開始したのは、1915年(大正04)11月16日です。
電鉄丸は、1925年(大正14)7月14日〜1943年(昭和18)12月18日に運行され、
電鉄バスは1953年(昭和28)4月1日〜1970年(昭和45)12月26日に運行されていました。
以上です。
それならば電車そのものは、なんと呼んでいるのでしょう?「電鉄電車」?「電鉄車」?
いえいえ「電車」は、そのまま「電車」です。
そう、長崎では電鉄の電車は「電車」と呼んでいるのです。
そして国鉄、JRの列車は?「汽車」と呼んでいます。蒸気機関車が廃止されたいまでも。
電車でも、気動車でも、客車でも、国鉄・JRでも、島鉄(島原鉄道)でも、MR(松浦鉄道)でも……
すべて一括して「汽車」なのです。
方言の一種かもしれませんが、微妙なところで区別しているようです。